大相撲引退後の話②

昨日のブログの続き

次に転職したスーパーマーケットでのお話をしたいと思います。
このスーパーマーケットは玉ノ井部屋の後援会事務局長が社長を務めるスーパーマーケットで、社長が約40年前に小さな八百屋からスタートしたお店です。

その後、テナントで入っていた場所の隣にあった工場を買い取り、そこに大きくリニューアルしたのが現在の店舗です。
私は、社長から「田代は身体デカくてお店に立つとちょっと邪魔だから事務所で伝票整理とかお金の管理をしてほしい」と言われ、入社してすぐに事務所に配属になりました。ただ、朝のお店は品出しなどで忙しいので、仕入れの荷物運びから店頭での品出しをして、営業開始のころ、2階にある事務所に上がり前日の売上金などを計算したり、仕入伝票のパソコン入力などの事務作業をしていました。

毎週各部門の部長会議が、会議室で行われていて、そこに新人ながら書記的な役割で参加をしてました。
その部長会議では、売り上げの報告や、人件費のこと、さらにはイベントの企画や社会情勢の話まで。
大相撲を引退したばかりの私には、すべてがとても勉強になりました。

”どうすればお客さんが来るのか?”

”どうやったら売り上げが伸びるか”

そんなことをみんなで考えて意見を出し合い、翌週の特売などを決めるのです。

私は、書記ですから最初の頃は、ただ話をノートにまとめる。そしてそれを議事録にして各部長に配る。
そんなことを毎週していました。
ただその会議に出ていてお店のことも少しずつ分かり始めると、あることに気が付くんです。
こんなことを書くと失礼かも知れないですが、それは、部長たちは、品物を見る目や、魚をさばく腕は超プロフェッショナルなのですが、実は買い物する側の目線があまり分かってないんです。

僕は買い物する側でしかスーパーマーケットに来たことが無いですから
「なんでうちのスーパーにはこんなのが無いんだろう?」とか
「もうちょっとこれこうすれば売れるのに」とか
そんな目線をもっていました。
僕が特別なのでは無く、ごく普通にみんなが思うことです。

なのでそういうことを時々、会議で話をしました。

商品の並べ方もそうですが、買う側の目線で、思うことを話したんです。

たとえば、魚の売り場ですが、担当者は毎日開店時に、刺身の盛り合わせとか綺麗にズラっと並べて販売します。
もちろん今朝買ってきた新鮮な魚を並べてます。担当者としては、毎日綺麗に同じように並べてちゃんと仕事をしてるのですが、買う側のお客さん目線で見ると、毎日、同じトレイで同じ場所に同じように陳列してあると、それは今日仕入れしたか分からない、いつ来ても同じ売り場にしか見えないのです。要は銭湯の絵みたいなもので、全然変化が無いんです。そうすると人間、目線がそこに行かなくなります。当然売れません。

なので、日替わりでトレイの色を変えてみたらどうか?とか、売る場所を微妙に変化つけて、陳列しませんか?とかそんな提案をしたのです。

さらには、マグロの刺身が、”赤身780円” ”中とろ980円” ”大トロ1280円”と売っていたので
「これ三種類食べたい人は、3パックも買えないから、マグロ食べ比べセットみたいに3種類一緒盛りで売りましょうよ」と鮮魚担当の若い社員に、そう提案したのです。
そしたら「素人は黙っとけ!」とめちゃくちゃ怒られたのです。

本当に当たり前のことを言っただけなのですが、当時社員たちも、開店に間に合わせるために必死で商品をパックしたりしていたので、たまたまかも知れないですが、魚の売り場はそんな状態だったのです。

そんな話を聞いた社長が、ある日「明日から店長を田代に交代する」というのです。
ド素人で、事務作業しかしてないのですが、ある日から突然従業員約70人もいるスーパーの店長になったのです。

ただ、僕が感じたことは、スーパーなどの小売業は、私がずっとやって来た相撲とは違い、すぐに結果が出るんです。相撲の取組の結果とは違いますよ(笑)小売業は結果が早い。

どういうことかというと、その日仕入れたものがその日に売れる。その日の仕事がすぐに結果に出るんです。
自分が自信を持って仕入れた商品がその日に売り切れるととてもうれしいものです。

だからどう並べたら売れるのか、どれくらいの売値なら売れるかとか、いろんな技を仕掛けるのです。
販売の棚から少し通路にハミ出て、段ボールで販売してる商品とか見たことありませんか?
あれは、わざとその商品に目を向けるためにおいてある場合もあるのです。

そんなことを毎日繰り返して、お客さんの購買力を上げる。
そんな積み重ねが売り上げにつながるのです。

私がしてきた相撲は、今日四股を踏んだからといって明日すぐに強くなるものではありません。
毎日毎日、稽古をして徐々に徐々に強くなっていくのです。

なので私にとってスーパーでの仕事は、とても面白いものでした。

スーパーの話はまだまだあるので、また書きたいと思います。

ちなみに写真は、森永卓郎さんがテレビ番組やラジオで良く私のことを話してくれて
結構お店に来てくれていたので、写真を撮ってもらいました。

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